SAP S/4HANA Cloud の会計管理ソリューション

プロアクシアコンサルティングでは SAP S/4HANA Cloud, Public Edition のご紹介・ご提案から導入のご支援までご提供させていますが、本ブログでは SAP S/4HANA Cloud における ”会計管理ソリューション” について、その特徴および機能概要を説明します。

目次

  1. 会計管理ソリューションの特徴
  2. 会計管理ソリューションの主要サブモジュール
  3. まとめ

会計管理ソリューションの特徴

世の中には様々な会計管理システムが存在していますが、SAP S/4HANA Cloud, Public Edition の会計管理ソリューションには以下のような特徴があります。

現場業務との整合性が担保された統合管理データ

営業の売上や債権情報、倉庫の入出荷に伴う在庫情報、工場の生産実績情報等、それぞれの部署で管理されている情報を決算時に集約・照合・整理することが求められます。
SAP では発生源で入力されたデータを即時会計仕訳としても自動計上される為、Single Source of Truth (信頼できる唯一の情報源) となり、かつ即時会計データとして反映されることで、決算時の作業効率化が図られ、決算早期化に寄与します。
これは、財務報告プロセスの効率化・正確性を担保することになり、株主や関係者へ迅速かつ透明性のある情報を提供することにつながります。

会計データの統合管理によるリアルタイム経営に寄与

企業全体の会計データが統合・一元管理されることから、リアルタイムで経営者が会社全体の財務状況を把握でき、戦略的な意思決定をサポートします。
また、管理会計も財務会計と統合・一元管理されている為、財務情報と整合した情報源を基にした正確な各種セグメント分析などに寄与します。

スピーディーで継続的な機能提供

オンプレミスシステムのサポート期限切れにより法改正などに対応できなくなる可能性がありますが、SAP S/4HANA Cloud, Public Edition では、各国の法律やコンプライアンスの要件が考慮されたロードマップがあり、日本国内の法改正についても対策が盛り込まれ、アップグレートの形で提供されます。
また、法改正のみならず機械学習や AI 等の最新技術を取り込んだ機能を SAP が開発し、継続提供がなされます。

会計管理ソリューションの主要サブモジュール

会計管理ソリューションを構成するサブモジュールのうち、一般的に使用されるものは以下の通りです。

財務会計

総勘定元帳 / 単体決算

日々の仕訳処理をサポートする仕訳登録や一括登録機能・勘定明細や残高の照会、また決算時の仕訳帳やバランスシート・決算書の作成、法定レポートの作成、勘定科目のコード管理など、企業の基本的な会計プロセスをサポートします。
元帳を複数用意して JGAAP・IFRS 等の複数会計基準に対応した簿価を保持することも可能です。

SAP S/4HANA Cloud においては、ベストプラクティスに基づいて事前に勘定コード表・体系が定義されており、ロジスティクスとの自動仕訳定義も用意されている為、そのまま活用することで即時システムの活用が可能となります (自社コード体系への変換も可能です) 。
※オンプレミス型と異なり、勘定コードがマスタ扱いではなく、移送対象オブジェクトとなっている為、勘定コード設定が前提となる各種環境構築においては注意が必要です。

債権管理

顧客との取引に関する情報を管理し、請求書の作成や債権の期日管理や回収状況の確認・入金業務などを行います。
締め請求業務・全銀協フォーマットの電子銀行報告書の取り込みなど、日本固有の商習慣にも対応しています。
販売ソリューションとの統合により売掛金情報を補助元帳に即時反映し、与信状況の管理・出荷コントロール等も行えます。

また、債権担当者のサポートに重点を置いた債権管理用のダッシュボードが提供されます。
債権回転日数、年齢調べ、計上済み債権、与信状況確認など、様々なレポートが用意されています。

債務管理

仕入先との取引に関する情報を管理し、受領した請求書の処理や支払業務・債務の期日管理などをサポートします。
サプライヤから受領した請求書の登録は、購買ソリューションとも統合されており、買掛金の一元管理が行われます。

自動支払プログラムは、支払予定の管理から実際の支払/債務との照合、全銀振込データの出力までの一連の業務を管理することができます。
支払方法としては、銀行振込だけでなく手形、電子記録債権による決済もサポートしています。

また、債務担当者のサポートに重点を置いた債務管理用のダッシュボードが提供されます。
支払期日管理や債務回転日数、年齢調べ、計上済み債務、保留など、様々なレポートが用意されています。

固定資産管理

保有している固定資産の現物管理や減価償却、会計・税務上の計算などの処理を行うことができます。
有形固定資産や建設仮勘定に限らず、無形固定資産などもを管理対象とすることが出来ます。
固定資産の取得に関しては購買ソリューションとの統合により購買業務との連携も可能です。

取得した資産は固定資産台帳上に管理されると同時に、総勘定元帳ともリアルタイムに連携されます。
減価償却費計算では、会計基準毎の 償却領域 × 計算条件 (定率法・定額法等) で計算を行って会計基準毎の元帳へも連携されます。
また、償却資産税申告書の作成、”別表16” の作成機能などの日本固有要件も標準で提供されています。

管理会計

間接費会計

間接費の財務計画の策定、および実績コストの配賦、予実監視を行います。
コスト管理のオブジェクトとしては、組織を構造化した原価センタや、イベントやタスクを管理する単位としてのプロジェクトが定義可能です。

部門別会計

利益センタ毎の収益と費用データ収集、収益と費用の付替・配賦、損益の処理と分析を行います。
原価センタは利益センタに紐づいており、原価センタの費用は利益センタで認識されます。
また、利益センタの上位の組織としてセグメントもあり、会社間を跨いだ分析レポーティングを行うことが可能です。

収益性分析

現場業務と会計が統合されたシステムであるために、現場から経理業務に情報が引き継がれ、情報の2重入力、照合作業などを省力化できます。
よって、製品別・事業別・マーケット別など様々な特性情報の予実データを各取引データから自動収集し、全社で多角的に分析することが可能です。
これにより経営の意思決定に有益な数値情報をタイムリーに提供します。

製品原価管理

製品毎に標準原価積上を行うことでの計画製品原価の算出、製造指図別の原価収集や間接費の配賦と生産マスタ/製造実績の集計を行い、製品の製造にかかった製造原価の算出を行います。
実績を基に品目毎に実際原価を算出し、原価差異の分析に役立てます。

資金管理

会計情報と連動して、会社の資金および流動性ステータスの把握の為の KPI を表示・確認します。
資金ポジションを通じて銀行口座別の現金と流動性預金の残高を確認することができます。
入出金実績からの実績キャッシュフローや、債権債務サブモジュールなどとの統合によって将来のキャッシュイン/アウトを流動性予測として確認することも可能です。

まとめ

SAP S/4HANA Cloud, Public Edition の会計管理ソリューションは、現場業務との統合性/リアルタイム性により、迅速かつ正確な財務情報の把握と経営戦略の策定と実行において大きなメリットとなります。
また、持続的な機能の提供により、変化するビジネス環境に対応し、成長をサポートするための効果的な手法として価値を提供します。

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