保守サービス業務の革新によって企業価値を高める(システム支援)

前回 (10/11) 掲載の「保守サービス業務の改革によって企業価値を高める」の続編として、システム支援面から記載いたします。
目次は、以下となります。最後までお読みいただければ幸いです。

  1. 今回ご説明する支援システムの範囲
  2. 保守プロセスについて
  3. 保守サービスシステム支援に欠かせない事

1.今回ご説明する支援システムの範囲

保守サービスのトレンドは、「1. 随時保守 (突発保守)」 から 「4. 予測保守」 に分類出来ます。
多くのトップ企業がチャレンジしている部分は、 「3. 条件保守」 になります。設備センサーから情報を得て、値が閾値を超えていた場合に保守サービスを計画します。

今回、設備販売企業が実施している 「1. 随時保守」 について説明したいと思います。
尚、1 と 2 の違いは、定期保守契約の中で保守を実行するか、随時保守を行うかの違いです。

2.保守プロセスについて

ご紹介する部分は、以下の枠線内のプロセス (①~⑥) となります。
通常、 「① 修理依頼の問い合わせ」 ~ 「③ 設備の修理履歴確認」 は並行して行われます。

ご紹介するシステムの画面は、弊社スイスのデモシステム (サービスクラウド:SAP Service Cloud および FSM:SAP Field Service Management) を利用しているため、メニューは英語となっております。

① 修理依頼の問い合わせ

以下は、お問合せ受付担当者が使用するサービスクラウドの初期画面です。
チケットとは、お客様からのお問合せを記録するもので、お問合せ毎に新規に作成します。メール等でお問合せを受けた場合は自動で作成も可能ですが、ここでは電話でのお問合せを受けた場合を想定してチケットを作成します。

チケット作成画面では、以下のようにお問合せに対する必要項目を入力します。

② 契約検索

お客様と締結している契約内容を確認します。

③ 修理履歴確認

過去に同様のお問合せが合ったかどうか、チケットを検索して作業内容を確認します。
過去事例・技術情報等を参照して問題が解決した場合は作業記録を行い、チケットをクローズします。

■ チケット作成の続き

保守要員での対応が必要と判断された場合、お客様との会話で既存契約でカバー可能かどうかの確認が必要です。
また、事前に作成された契約を自動参照して、補修作業 (例えば部品・サービス無償) 等を追加し、補充部品については ERP に予約連携し、同時に FSM にチケットを転送します。

以上でサービスクラウドを使用するおお問合せ受付担当の仕事は終了です。

④ 来訪日時と修理方針連絡

ここからは、修理受付より転送されたチケットを具体的に保守要員に割当てる作業となります。
使用するシステムは FSM で、チケットはサービス指図と読み替えられます。

転送された指図に基づき、計画担当は顧客に訪問日時の連絡を取り、作業リストから、「ドラッグ & ドロップ」 で計画ガントチャートに貼り付けます。
これにより、モバイルを持つ保守要員に指図を転送することが出来ます。

指図には、保守に必要な各種情報 (技術情報 PDF、作業手順書 (FSM Smartform で作成)) 等を添付することが可能です。

⑤ 修理サービスセンターのベテランからの後方支援

■ Microsoft Teams を利用した後方からの支援システム (自動翻訳機能は現在デモ版のみ)

海外にいる保守サービス要員に、日本から技術支援を行う事が可能です。
双方の音声は自動翻訳されテキストで表示されます。(デモ完成 → 実用化中)

■ 社内の技術情報システム (技術文書・図面等の管理システム) への連携

社内の技術資料サーバーにアクセスし、現地で技術資料を参照することが可能です。

⑥ 作業報告作成 (保守要員用モバイル)

保守要員は、指図および添付資料にもとづいて作業準備を行い、作業を実施し、実績記録および作業報告書作成を行います。
作業実績は、保守担当 (計画者) に自動転送され、承認後、サービスクラウドのチケットが更新されます。

モバイルで指図受信後、内容確認を行いお客様先に向かいます。

作業実績を記録します。

自動作成された作業報告書に、お客様のサインをもらいます。

ERP (S/4HANA) との連携が行われていれば、サービスクラウド上のチケットが更新された後、ERP 内のサービス指図に実績が反映され請求書作成が可能となります。

3.保守サービスシステム支援に欠かせない事

保守サービスのシステム支援は、サービスクラウド (修理受付) → FSM (保守実行) → ERP (実績に基づく請求) を利用して行うことが出来ますが、FSM だけ使いたいというお客様でも利用可能です。FSM では、保守作業計画 → 割当 → 実行 のプロセスだけを支援することになりますが、既にお持ちのフロントエンドシステムと連携する仕組みが用意されています。

最後となりますが、冒頭の 「保守サービスのトレンドと今後」 もありますように、保守サービス業務の革新において最も基本となり重要な項目は、SLA (Service Level Agreement) に基づいた定期保守契約締結です。突発修理の割合を減らし、保守要員の負荷を平準化し、利益を生み出すためには定期保守契約の締結が必須です。
また次のステップである条件保守・予測保守に進むためにも、お客様との定期保守契約締結を維持・継続することが重要です。

なお、弊社では業務面からのコンサルティング (あるべき保守サービスプロセスの検討) も行っております。