保守の視点からコンサルの成長を考える(前編)

プロアクシアコンサルティングでビジネスソリューション事業部に所属しています F.T です。
本稿では、システム保守の活動がエンジニアのスキルの向上に寄与する点について考えてみたいと思います。

これまでの経歴

IT 業界へは、ソフトウェアハウスに所属してオープン系システム開発のプログラマーから携わり始めました。その後、基幹系システム・EC 開発の SE・国産 ERP の導入コンサルを経て、SAP のコンサルになりました。

リーマンショック状況下で私の SAP でのキャリアはスタートしたものの、”SAP の新人” であったこともあり、中々コンサルとしての一歩が踏み出せませんでした。そんな中、保守業務に携わったことをきっかけに、次のコンサルとしてのステップへ駆け上がることができました。

現在のコンサルとしての仕事を行う基礎となった保守について、学んだ事や経験を基に、我々コンサルのキャリア形成における保守の位置づけについて整理しました。

システムライフサイクル ~ ユーザーにとってのシステム利用と保守の重要性

まずは、システム保守の位置づけとそこで意識すべきことを、システムライフサイクルに照らし合わせて考えてみます。

システムライフサイクルの先頭に当たる ”設計・構築” は、アプリケーションコンサルタントである我々の主たる職務です。皆さんも様々なご苦労をされつつも、”設計・構築” = “創造活動” は、ポジティブな非常にやりがいのある活動です。

ユーザーにとってのシステム利用

システム稼働開始は我々にとっては当初目指すべき目標となりますが、一方、ユーザーにとってはスタートラインであり、稼働後に導入目的に沿ったシステムが安定的に利用ができることこそが重要です。業務課題への対応などの為に稼働中のシステムに対して再設計・再構築が行われますが、システム改定後も継続して安定利用できなければなりません。

水道管を敷設したが度々断水が発生して水が使えない、水道管を交換したら水が出なくなった、といったことでは我々の生活が成り立たないことと同じことと考えます。
よって、システムが安定的に利用できることはユーザーにとって最も重要なことです。

ユーザーのシステム利用を支える保守と意識

この重要な利用フェーズを、保守活動を通じて下支えする我々としては、IT 知識はもちろんのこと、作業の正確さや責任感が求められます。システム稼働中におけるちょっとした異常の見逃しや放置、報告漏れ、例え軽微なオペレーションのミスであったとしても、最悪の場合 システム障害 ~ ユーザー業務 の停止につながる可能性があります。

勿論皆さんも正確性を意識し、責任感を持って業務に当たられているとは思いますが、ユーザー業務に使用されているシステムの保守業務においてはより意識すべきであり、また同時にそのメンタリティを鍛えることを心掛けなければなりません。逆に言えば、緊張感のある環境下であるからこそ一つ一つの作業に集中し、正確に作業を遂行する意識が育てられるともいえます。

成長への課題と解決のための保守の有用性

ユーザー業務、および稼働中のシステムを我々は理解して保守業務に対応する必要があります。そうでなければ本番稼働中のシステム保守などできませんし、再設計・再構築も行うことはできません。

このユーザーの業務を理解することこそが業務知識を習得することになり、同時に稼働中のシステムの仕組みを分析する力を養うことにつながります。保守は、システムを業務・IT スキルの両面からトータルで見渡す力が養える優れたフィールドと考えます。これは SAP 未経験者にも、経験者にも言えることです。

SAP 未経験者・若手にとっての保守

SAP 経験の少ない若手の方は、座学でカスタマイズや ABAP 開発を学んだからと言っても業務知識があるわけでもないため、いきなり業務を理解したコンサルとして、設計・構築が行えるわけでもないかと思います。生きた業務が投影されたシステムを相手にする保守は、業務中における SAP の考え方やオペレーションを知るといったことを学べる優れた素材です。

私自身も目の前の業務を背景に、カスタマイズのパラメータ値の決定やアドオンプログラムが開発された経緯を学ぶ上では非常に役立ちました。SAP 未経験者や若手にとっては同様であろうと考えます。

経験者にとっての保守

SAP 経験者であっても、コンサルから指示を受けて個別のアドオン機能設計~実装~検証を繰り返していると、要求分析や方式設計などの上流のフェーズへ中々進めないケースも多いかと思います。
次のステップに進むための業務知識の蓄積と経験のアピールのためには、保守を通じたスキルの拡大は有用といえます。

新規導入において、稼働後のイメージを持って設計・構築することのできるスキルはもちろんのこと、稼働後の運用や再設計・構築まで意識できるスキルがあれば、より上流のプロセスにかかわるチャンスが訪れます。

前編まとめ

私もコンサルへの成長に当たって SAP 未経験ということが課題ではありましたが、そんな時に保守にかかわることが解決の糸口になりました。

保守が我々コンサルにとってのどのような位置付けなのか、そしてユーザーの利用にどのように貢献するのかについて、システムライフサイクルに照らし合わせて述べてきました。
また、成長の課題となるポイントと課題解決のための保守の有用性についても挙げましたが、後編ではシステムライフサイクルに沿ったコンサルの成長サイクルを通じて深堀します。